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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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たいみんぐ

畳の上に居たはずの茶トラ柄の猫が素早く、部屋から出ていった。むつは新士の手を振り払うと晃のコートをあさって、そのあとジャケットをあさった。何がしたいのかと、晃は困惑している。ちゃりっと鳴る目的の物を見付けたのか、むつはパーカーを掴んでばたばたと走っていく。むつが何を持ったのか分かったのか、西原があっと言って追い掛けていく。山上と晃は何が何なのか分からず、顔を見合わせている。


寺を出る寸前で掬い上げるようにして、猫を捕まえたむつは靴をはいて駐車場に向かっていく。後からやってきた西原はむつに追い付くと、手を差し出した。


「…出せ」


「何で分かったのよ?」


大人しくむつは握り締めていた、ちゃりっと鳴る物を西原の手に置いた。駐車場に行くと、西原はむつに渡された晃の車の鍵でロックを開けた。


「…ご主人に会えなくて寂しい、気持ち次第で妖になる、だから猫又になりかけてる、家路が分からなくても戻ってきた猫…お前、この猫が病院に行きたがってるって思ってたんだろ?で、この猫が飛び出して行ったのを見て確信した、と」


「さすが…」


「お前の考えくらいはな。宮前さんほどじゃないけど…あんだけ考えがただ漏れしてたら分かる。さて、病院の場所は?ご主人の名前も分からないのに…出てきてどうするんだ?」


「それは…この子が教えてくれるよ。ね?」


助手席におさまったむつは、シートベルトをしめた。西原は、むつの言う事を信じているのかエンジンをかけて駐車場から車を出した。


むつが何を探していたのかと、パーカーを持って出たことから、外に出ていったと分かった晃は慌てて、2人を追い掛けたが駐車場にはすでに車はなかった。


「…むつは単独行動得意だからな」


のんびりとやってきた山上がそう言うと、晃は深々と溜め息をついた。


「西原が居るなら大丈夫だろ。西原はちゃんとむつが何を考えてたのか分かってたみたいだしな」


「…熱がこれ以上、上がる前に戻ってきてくれたらいいですよ」


「そうだな。俺らは仕方ない、遺体の番でもしておくか。まぁもう大丈夫だけどな」


だろう、ではなく大丈夫だと山上が言い切った理由が晃には分からなかったが、山上がそう言うならそうだろうと晃は頷いた。

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