たいみんぐ
何か分かった事でもあるのか、むつは電気を消して、障子を閉めると元居た部屋に戻っていく。何が何だか分からないという顔の新士は、しきりにむつに休むようにと進めている。だが、むつは聞こえていないのか、部屋に戻ってぺたんっと座った。
冷たくなっているココアを飲み、ポケットからタバコを取り出して、火をつけた。ふーっと煙を吐き出しながら、むつは膝に乗っている猫を撫でている。
むつの様子を気にしつつ、部屋に戻ってきた4人は、むつの真剣な表情を見て、何も言わずに黙って座った。
「…種族を越えるんだよ」
「え?」
「そうだ‼越えるんだよ…同じなんだ…」
山上はむつが何に気付いたのか、知りたくて堪らない様子だった。どうしよう、と呟いて長くなった灰を灰皿に落としたむつを見て、山上と西原もどうしようという顔をしている。
「…やっぱり、同じ?」
持ち上げた猫に向かって話し掛け、首を傾げるむつはいよいよ熱でおかしくなっているようにしか見えない。
そろそろと近寄った新士が、むつの隣に座った。そして、ぽんっとむつの膝の上に手を置いた。
「むつ、休んだ方がいいよ。体調悪い時に、無理する必要はないだろ?少し休めよ」
「…お通夜、いつ?」
「明日の夜だ。そんな事はいいから…」
「明日の夜じゃ遅い…早く帰りたいし。今夜だ、今夜…もう1回来させたい…どうしたらいいんだろ。2週間前に被害にあった時も、ぴたっと雷も雨も止んだ?」
「いや…そんな珍しい事があれば覚えてると思うけど…いや、もういいから寝ろよ」
新士がむつの手から猫を抱き上げて下ろして、むつの手を取った。むつは、黙って新士の手を見ているだけだった。手を振り払われなかった事に安堵したのか、新士がむつの手を引っ張って立ち上がろうとした。
「あ…」




