たいみんぐ
どこの部屋かと探しながら、3人が歩いていくと、晃のいたたたっという声が聞こえてきた。新士のすみません、すみませんという声もする。
「大喧嘩みたいね」
「………」
晃と新士が猫の喧嘩に巻き込まれている事に、むつはあまり関心がないようで最初に通された部屋に戻っていく。
「俺は晃の所行ってくるから。遺体を見張っとけ?猫なんか見せてくれって頼むんじゃなかった」
自分が猫を見せてくれと頼んだから、晃が猫の喧嘩の仲裁をしているのだと山上なりに、責任を感じているようだ。むつは、いってらーと暢気に言っている。
「…むつ?」
「なぁに?」
遺体がきちんとある事を確認し、むつは冷えている茶を飲んだ。自分の分は飲み干してしまっているから、晃の分を飲んでいる。
「…意外と仲良かったんだな?すぐに別れたって言ってたわりにはさ」
「別れたけど、高校は一緒だったからね。向こうが高3で、あたしは高1。1年間は学校も一緒だったし」
「ふぅん?しんちゃんねぇ…」
湯飲みを置いたむつは、何が言いたいのよと西原の方を見た。西原が、不機嫌そうな顔をしている理由が分からないのか、むつも少しいらっとしたようだ。
「さっきから何よ…お墓にいった時も機嫌悪そうにしてたし。嫌なら無理して来なきゃ良かったのに」
「はぁ?」
「はぁって何?」
「俺はっ…」
言いかけた西原は口をつぐんだ。元カレとの再会が、気まずいと言いながらも意外と仲良さそう2人が対して、イラついているのは、自分でもよく分かっている。それがただのヤキモチで、だからといってむつに当たるのが、間違いなのもよく分かってはいた。だからこそ、西原は黙ってしまったのだ。冬四郎の事といい、新士の事といい、余裕のなさが惨めに感じられた。
「…ごめんって…一緒に過ごすはずが、こんな事に巻き込んじゃって…イブの時もそうだし…いっつもタイミング悪くて…悪気があってじゃないんだよ?」




