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ひとりきり
吉岡は、にやにやとしているだけで何も言わない。祐斗はすぐにでも、この家から出たかったが、ドアの前には吉岡が立っている。
祐斗は落ち着いて、考えなくてはいけないと思っていた。だが、落ち着こうにも考えようにも、自分一人で居る以上なかなか上手くはいかない。
「娘はここには居ないんでしょうか?」
「え?」
吉岡の言葉に、祐斗はここに何をしに来たのかを思い出した。彼が求めているのは霊視だった。それさえすれば、帰れるそう思ったのだ。
「えぇ…居ないみたいですね。何も視えませんので」
明らかにがっかりしたような顔つきになり、吉岡がうなだれた。そして、ついでのようにある事を思い出した。
それは昨日の夜に吉岡と出会った時、西原も疑問として聞いていた事だった。
「どうして、僕に霊視が出来るって分かったんですか?昨日の夜、初めてお会いしたのに」
「それは昨日、お連れさんも疑問に思ってましたね。お答しましたよ?似たような物だから、と」




