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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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たいみんぐ

むつが外に出た時には、雨は上がっていたし、雷もなかったかのように消えている。


「完全に逃げられたかも…」


「雨雲と一緒に来たって事か?」


「雨雲と雷雲と一緒に、だね…たぶん」


そう言い、むつは玉砂利を踏みしめて墓場の方に向かっていく。一緒に出てきた山上と西原が、あとからついてきている。晃は完全に部外者として、新士と共に部屋に残っているのだろう。


「…前にね、実家…玉奥の家の方だけど…に行った時に、物置でね妖について書いてある本を見付けたの。そこに、遺体を連れ去る妖の事が書いてあったの」


山上と西原は、むつが先程見た怪しげな物についての話を始めたんだと分かり、相槌を打っている。だが、むつがこんな風に話をするなんてかなり珍しい。


「新士さんの話に猫の耳みたいなってあったでしょ?で、さっきの炎…たぶん、火車だと思う」


「かしゃ…?」


「うん。姿をはっきりとは見てないし、本もちゃんと読んでないけど…火車っていうのは、悪い事を繰り返して死んだ人を地獄に連れていく使者みたいなもの…えっと…あと、何だっけ…うーん、思い出せないかも」


「…珍しいな」


「何が?物忘れが激しいのは前から」


「じゃなくて、お前が妖の説明するなんて」


「…かな?ってか、社長は現場来ないし、先輩だって毎回一緒じゃないでしょ?あたしは颯介さんと祐斗には話してるつもりだけど」


西原はそこは否定しないと言った。だが、西原にしてみればむつからこんな風に説明を聞いた試しが、なかったような気がしていた。颯介と祐斗には話してると言うなら、そうなのかもしれない。その2人が居ないから、一緒に来ている山上と西原を相手に、むつは考え事をしながら話しているだけのようだ。


「地獄の使者が墓場に逃げる…今回も墓場に逃げたのかしら?それとも…どっか別の所?お葬式っていつ?」


「それは…さぁ?」


墓場を端から見回しているむつは、そうよねと呟いている。ペンライトの細い光では、1番奥までしっかりと照す事は出来ないが、墓石に枯れてきている花やコップ。それ以外に変わった物はなさそうだった。ざっと見回して満足なのか、むつは戻ると言い出した。ついて来たが、特に何もないならと山上と西原も、戻ろうとしている。

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