たいみんぐ
新士を案内役に先に歩かせ、むつは西原と並んで歩いている。のんびりと夜の墓場を散歩しているようだが、むつは足元や周囲にしっかりと目を向けている。西原も真面目な表情をして、何か怪しげな物がないか目を向けている。
「…そういえば、うちの社長は?」
「寒いからって戻ってったぞ」
「仕事なのに…」
はぁと溜め息を吐いたむつは、寒そうに肩をすくめている。マフラーはしているが、パーカーでは風を通すのだろう。
「何でコートやめたんだ?」
「動きにくくなるから。何か肩が上げにくい気がするもん」
「…サイズの問題だな」
「薄手のパーカーにジャケットにしたら良かったかも。そっちのが可愛くない?」
「高校生みたいだろ…」
高校生と言ってから、西原は顔をしかめて、ちっと舌打ちを鳴らした。何で、舌打ちをしたのかと、むつは少し驚いていたが、何となく機嫌の悪そうな西原には、何故とは聞けなかった。
辺りを見回してながら、ゆっくり歩いていると、ぽつっと西原の眼鏡に水滴が落ちてきた。
「雨だ…」
「予報通りみたいだね」
ぽつっ、ぽつっと立て続けに降ってくると、むつはぼすっとパーカーのフードをかぶった。
「本降りになる前に戻りましょう」
少しだけ歩調を早めた新士が言うと、むつと西原は同感だと頷いた。




