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ひとりきり
机やベッドはいつも使っているかのような、感じがしていた。祐斗は何気なく、机に置いてあるノートをパラパラとめくってみた。授業中に使っていたノートなのか、赤や緑のペンで細かく書き込みなんかがされていた。
「ところで…娘さんはおいくつだったんですか?」
「16歳でした」
「そうですか。まだ高校生だったんだすね…それで、何年前に?」
祐斗がノートを閉じて、吉岡の方を見ると彼はにやにやと笑っていた。
「もう…40年経ちますね」
「え?」
祐斗は吉岡の顔をじっと見た。どうみても50代にしか見えないが、どういう事なのだろうか。
「よ、吉岡さんはおいくつなんですか?」
「53ですよ」
吉岡の言う事が本当であるならば、13歳で高校生の娘が居た事になる。だが、それはどう考えても有り得ない事だ。
祐斗は何も言えず、吉岡の顔をじっと見ていた。簡単に済むと思っていた仕事だったが、今は不安と何とも言えない恐怖しかない。
「どういう事…ですか?」




