たいみんぐ
「まぁそれはいいとして…で、今夜なご遺体を預かってるそうなんだ。だから、またそれが出たら困るからと…急遽、相談されたんだ」
「それが何なのか分からないけど…人ではないなら…うん、そうね。社長は?もう話は聞いてて、うちに一緒に来てるって事は…」
「無理に引き受けなくていいだろ?湯野ちゃんと祐斗にはまだ話してないし。晃から話が来たからな、とりあえずむつにもと思っただけだ」
「そう…」
ぴりっとどら焼きの袋を開けて、ふわっふわの生地を半分にしたむつは、片方を西原に渡した。しっとりと柔らかく口に入れると溶けそうな記事と、甘く粒が分かるくらいに残っている餡子をゆっくり味わいながら、むつは考えている。
「颯介さんと祐斗は休ませてあげよ。しばらく、あたしが振り回した日が続いてるし…」
「行くのか?」
「行ってみない事には…でも、近所だし…あたし、今は何の能力も使えないけど…そういうのがあるって、今回の事とかさ…周りに知れ渡るのは嫌だから」
「お寺さんだから口は固いはずだけど…まぁその辺はちゃんと慷慨しないように頼むつもりだ。遺体が盗まれそうになったのを知ってるのも、ご住職と跡継ぎの長男だけだそうだしな」
コーヒーで口の中をさっぱりとさせたむつは、それなら行くと頷いた。だが、頷いてから、はっとしたように西原を見た。どうしようと言いたげなむつの表情に気付いた晃は、むつと表情を変えない西原とをそっと見た。
「…西原君は明日は勤務か?」
「いえ、明日は非番です」
「そうか。俺もだ」




