そんなひも
ぱたんっとドアが閉まると、微動だにしなかった3人がもそもそと動いた。
「無視するって言い方が…」
「本気で寂しそうでしたよ?無視したのも本当ですし…むっちゃんに悪い事した気がします」
「そもそも、何でむつさんと西原さんをくっつけようとしてるんですか?」
「くっくつけたいわけじゃないけどな…むつも西原を意識してるのは間違いないし」
「社長は西原さんの味方なんですね。むつさん…宮前さんの事は諦めたんでしょうか?」
祐斗が疑問を口にすると、それは分からないと颯介も山上も首を傾げた。だが、颯介と祐斗の目から見てもむつが西原を意識している事、そしてそれがプラスな方向なのはありありと分かる。だからと言って、むつを無視して居たのは、さすがに心苦しかったようだ。
「…俺たちも帰るか」
「そうですね」
毛布を畳んで、祐斗がまとめて片付けに行った。そして、戻ってくると颯介と山上は同じような本を手に持っていた。祐斗の使っている机にも置いてある。
「…むっちゃん、アルバムにしてたから戻りが遅くなったんですね」
「みたいだな」
祐斗はリボンをほどいて本のページをめくった。むつが撮ったであろう写真が、何枚もそこにはおさめられている。
「わざわざ作ってくれたのに、お礼を言ってないですし、無視までして…俺ら最低すぎませんか?」
「…明後日、謝る。礼も言う」
山上が絞り出すような声で言うと、颯介と祐斗は当たり前だという顔で頷いた。
「それにしても…珍しくむっちゃんが素直に西原さんについて行きましたね。狸寝入りに気付いてても、無理矢理起こそうとしたりもせず…」
「たまには、そんな日もあるんじゃないか?」
「ってより、も…察してたんですよ。西原さんから伝言聞いたし、誰も起きないから」
「むつさん…何か渋々行くしかなかった感じになったんじゃないですか?社長が外堀埋めるから」
颯介と祐斗は、むつが作ったアルバムを大事そうに抱えて山上をじろっと睨んだ。
「俺が…悪いのか?」
じっと山上を見たまま、颯介と祐斗はこくりと頷いた。




