そんなひも
「そんなので、いいの?」
「そんなのだから、いいの。あと…」
「まだあるの?」
「迷惑じゃなかったら、今から飯行かないか?結局イブも一緒だったけどちょっと違うし、昨日はすっぽかされたし…」
「昨日の事は根に持ってるのね…」
「まぁな。忘れられてたってのがな…むつのドレス姿も見れなかったし。残念すぎる」
「ごめんってば…もぅ…で?どこに行く?」
むつも少しだけ西原に寄り掛かった。こてんっと頭を肩に置くと、西原は顎をむつの額に置くようにした。
「…それは決めてなかった」
「もう…じゃあ、皆起こさないと。待たせたのに、先に帰るわけにはいかないし…」
「いや…大丈夫だろ」
「何でよ?」
「…何ででも。あ、山上さんからの伝言がある…明日は休みにするから、明後日は大掃除して仕事納めにするからなって」
「何で、先輩が伝言預かってるのよ…」
「んー?それは、まぁ…」
西原が誤魔化したように笑うと、むつはじっと西原を見た。そして、西原を押し退けると、奥のソファーの方を向いた。ふぅと溜め息をついたむつは立ち上がって、紙袋から本の形をしたアルバムを取り出して、それぞれの机に置いた。
「………」
とことことソファーの前まで行くと、むつはしゃがみんごで3人の方をじっと見た。
「戻ってくるの遅くなってごめんね。重ね重ね申し訳ないけど…先輩とご飯行くから先に帰るよ?で、伝言も聞きました…また明後日ね、お先」
微動だにしない3人に向かって言ったむつは、上着を着ると紙袋の中にカメラをしまった。
「…皆が無視する」
「う、うん…まぁほら、寝てるしな。な?」
コートを着た西原は、笑いそうになったが、むつの手から紙袋を取ると行こうかとドアを開けた。未練がましくソファーの方を見ていたむつだったが、大人しく事務所を後にした。




