そんなひも
「お前…木に登って何してんだよ」
「あーまぁ色々と…」
くすくすと西原は笑いながら、1枚1枚写真を見ている。奥村が撮ったむつは、どれもいきいきとしていている。楽しそうであったり、真剣な表情を見せていたりと、ころころ変わる表情がしっかりととらえられている。
「…で、先輩こそ、何してるの?」
「ん?あぁ…待ってた。むつが帰って来るのを」
「………?」
「ほら、昨日はすっぽかされたろ?」
「あ、はい…ごめんなさい。怒ってるんじゃないの?返事なかったし…」
「怒ってるってより…残念だなって思ってる。約束も忘れてたんだろ?」
「…ごめんなさい」
本当の事で言い訳する事も出来ずに、むつは謝る以外に出来る事がなかった。申し訳なさそうに、むつがうつ向くと西原に少しだけむつに寄り掛かった。急に重みを感じで、むつは驚いたのか、机に手をついていた。
「そんなに重くないだろ?本気で寄り掛かったわけじゃないんだから」
「びっくりしたのよ」
耳元で西原の笑いを含んだ悪戯っ子のような声がして、むつは少し頬を赤くしていた。
「ちょっとは怒ってるよ?だからさ…俺の言うこと聞いてくれるか?」
「…出来る範囲内で」
「うん。じゃあ、これ頂戴」
西原は何枚か写真を選んで机に置いた。片手でカメラを構えて上を向いている写真と、枝にまたがってカメラを構えているむつの写真だった。




