そんなひも
くどくどと女々しくも語り合う神たちの声をBGMに、むつは作業をしていた。あと少しで完成しそうな時、机に置いていた携帯がぶるぶると震えた。
「…うわっ…あーもぅ…はぁい?」
『むつ。お前、今どこに居るんだ?』
「あ、ごめん。写真屋さんで…ちょっと色々あってさ。もうちょいで出来上がるの…待ってて欲しいんだけど…颯介さんも祐斗も予定あるのかなぁ…ってか、疲れてるもんね。待たせるのは、やっぱ悪いよね」
『いや、大丈夫だろ。あとどのくらいだ?』
「んー…1時間もかからない、かな?」
電話をかけてかた山上は、溜め息まじりに笑っている。1時間はかかりそうだな、意外と安心したような声だった。
『湯野ちゃんも祐斗もまてるってさ。意外と楽しみにしてるのかもしんねぇな。ま、無理にやる事ないからな?』
「うん。大丈夫、大丈夫…ちょっと面倒なのが居て、時間取られただけだから」
『…何かあったんだな?まぁいいや。待ってるから、気を付けて帰ってこいよ』
「はぁい」
通話を終えたむつは、丁寧に写真をはったり、ぐりぐりと色鉛筆を動かしていく。
「誰から?」
「うちの社長。写真、待ってるからって、気を付けて帰ってこいよって」
「あら…」
待ってるのは写真じゃなくて、むつちゃんの事よね、と奥村は呟いたが小さすぎる声は、後ろの神たちの声に消されてむつの耳には届かなかった。
「なら、早く完成させないとね。あたしは年賀葉書終わったから…早速、むつちゃんが撮ったの見てたわよ?」
「え…えぇーっやめてよ。プロの人に見られるなんて…恥ずかしいし」
「でも、いい写真よ?この下からのアングルとか…戦い前って感じでちょっと緊張感あるわね」
「誉められても恥ずかしい…」
「むつちゃんが試し撮りしたのは、プリントしといてあげるから。持って帰りなさいね」




