そんなひも
こくこくとむつが好奇心むき出しに頷くと、美しい女性、弁財天は笑いだした。
「嬉しい事だけどね、私には心に決めた方が居るのよ。だからね、2人とはこれまで通りのお付き合いをしていくわ」
「…そうなんですか?」
「えぇ。それで、写真の事もえびすが頼んだみたいね。出来上がったら、私にもくれるかしら?」
「も、勿論です。でも、あの…隠し撮りみたいな事してて、ごめんなさい」
「良いのよ。でもね、他の人には絶対に見せちゃダメよ?神がトレーナー着てたり、あわてふためいてたりなんて…みっともないわ」
「絶対にしません‼大丈夫です…あの、失礼ついでに…弁財天様がお心に決めた方っていうのは…」
「聞きたい?」
好奇心がおさえられないむつがこくこくと頷くと、弁財天はまた笑っている。ベンチに座り込んだ2人も、それは気になるのか、がばっと身を起こした。
「じゃあ、貴女にだけね。写真があるの」
そう言って、弁財天は胸元に手を入れて1枚の写真を取り出して、むつにだけ見せた。その写真を見たむつは、えっという顔をした。
「あ…あーっ‼うっそ‼本当ですか!?」
「あら、知ってるの?じゃあこれも…」
弁財天は胸元から1枚の紙を取り出して、自慢気にむつに見せた。むつは、がしっと弁財天の手を掴んでその紙を凝視した。
「あぁっ‼うっそぉ‼ずるいです‼ずるいっ‼あたしも頑張ったんですが、取れずで…あぁ…弁財天様‼くぅぅ…是非、是非とも今度ゆっくりお話を…」
「これね、なかなかね。厳しいのよね…私は本当にラッキーだったわ。それにしても、貴女もよほど好きなのね?」
「いや、もう大好きですよ‼えー?もういつから…小5…11歳からですかね。かれこれ、17年くらいずっと好きです。片想いです…」
「貴女の方が長いわね…」
「長さなんて関係ありませんよ‼気持ちです。愛に長さも大きさもないんです」
きっぱりとむつは言い切った。そして、少し悔しそうに羨ましそうに、弁財天の持っている紙を見ている。




