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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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そんなひも

「さ、適当に試し撮りして早くカメラに慣れなさいよ。そしたら、どっかに隠れて構えるのよ?あ、メモリーカード交換しておきなさいね。足りなくなると困るから。いいわね?今からはパパラッチになるのよ」


「…おっけ‼」


表情を引き締めて、真面目な顔をするとむつは神妙に頷いた。だが、カメラを撫でると、嬉しそうに口元が緩んでいく。そんなむつは首にかけられたショルダーバッグを肩に通して、レンズを覗いては色々な方向を見ている。


「あっち行ってくるね」


「カメラ覗きながら歩くのはやめなさい。危ないから…もう…気を付けて行きなさいよ」


「はーい」


やめろと言っても、念願のカメラを持たせて貰ってか、むつはレンズを覗いては、あっちこっちを見ながら歩いている。そして、転びはしなかったがつまずくとゆっくり振り返って奥村を見た。呆れた奥村だったが、むつが楽しそうで怪我さえ無ければいいかと、小さく畳んだバッグをしまって、カメラを片手にさくさくと歩いていく。


むつは木陰に入って、池の方にカメラを向けた。えにすが居るとは言えど、人には知った事ではないからか、池には水草が生えていて、濁った色をしているのが残念だった。だが、それでも鯉か何かはいるのな、ちゃぷんっと水が跳ねて波紋が広がる。むつは望遠レンズを取り付けて、池の方に向けて構えていた。


ちゃぷんっと水が跳ねた瞬間に、シャッターを連続してきった。水滴が跳ねた瞬間をとらえる事は出来なかったかもしれないが、波紋が広がる様子はしっかりととらえた。

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