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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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そんなひも

「えびすさんの言ってたのはこの辺かしら?」


「たぶん…そろそろ置いても良い?重い」


「あ、ごめん…って、むつちゃんちょっと体力なくなった?か弱い女の子みたいになっちゃって」


「元々、非力ですっ」


「はーいはい。さ、準備しなくちゃ」


むつがベンチに置いた大きなバッグを開けて、奥村はカメラを2台取り出した。そして、レンズに三脚が出てくる。


「ほい。むつちゃんも撮影するのよ」


「えっ!?まじで…でも、こんなカメラ…がちのやつでしょ?使った事ないもん…落として壊したらどうしよ…」


「首からかけなさい。そんなに重くはないはずだからね。あとレンズね…望遠のやつとメモリーカード」


小さなショルダーバッグにレンズとメモリーカードを入れると、奥村はそれをむつの首にかけた。カメラのチェックをしてそれを、そっとむつの手に持たせた。


「古いのだから。壊れても大丈夫よ。壊さなかったら、それあげるから。使いなさいね」


「…えぇっ!?えっ…本当に?良いの?」


「お古で悪いけど。物は良いのよ?あたしからのクリスマスプレゼントね」


「本当に?本当にいいの?」


「あげるわよぉ。だから、むつちゃんも素直にならないとね。自分に自信を持って、自分の気持ちに正直にならないと良い写真も撮れないわよ」


むつは渡されたカメラを撫でながら、じっと奥村の言葉を聞いていた。


「そりゃあね、写真は…人に見せたいものなら、計算してよく写るように撮る物よ。でも、計算しつくした綺麗さが大事な時とありのままが大事な時ってあるのよ。えびすさんがそうよね?ありのままが大事な時…だから、写真として形に残してあげたいの。素直に今だって時にシャッター押さないと逃しちゃう…気持ちもそうじゃないかしらね?」


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