そんなひも
「むつちゃんも好きな人居るんだ?」
えびすが確認するかのように聞くと、むつはくるっと振り向いた。組んだ足を色鉛筆で、ぺちぺち叩きながら首を傾げた。
「微妙。好きかどうかはっきりしないもん」
「でも、独占したいと?」
「独占したい、まではいかないかな。うーん…分かんない。むつは今は寂しい病だから」
「なぁによそれ」
「ちょっと前までさ、幼馴染みと友達がうちに泊まってたんだけど…2人とも帰っちゃったわけ。そうすると、家に帰ったら…当たり前だけど1人でしょ?何か寂しくって…」
「あーあんたそれ、危ないわよ。言い寄ってきたヤツが居たとしても、ほいほい付いて行っちゃダメよ?後悔したり自分が傷つくやつだわ」
「分かってるって」
再び、はぁと深々と溜め息をついたむつはタバコに火をつけた。そして、また机の方を向いて、ぐりぐりと色鉛筆を動かし始めた。
「むつちゃんはともかく…えびすさんよねぇ…ね、えびすさん、やっぱり毘沙門天さんに話してみたら?それで、2人揃って弁財天さんに気持ちを伝えるべきよ。ずーっと気持ちを温めてても、何もしないなら枯れていくわよ?」
「枯れていく?」
「そうよぉ。だって、毘沙門天さんが告白して弁財天さんと付き合うってなったら、えびすさんの気持ちは?行き場がないのよ?」
「…しない後悔よりした後悔。するかしないか迷うならする。はっきりしてる気持ちなら、行動はした方がいい」
「むつちゃんの言う通りよ?ちょっと向き合ってごらん?えびすさんの素直な気持ち、あるでしょ?」




