ひとりきり
吉岡はゆるく首を振った。そして、にやっと笑った。だが、その笑いは一瞬で祐斗は見逃していた。
「お仕事をして頂くわけですから、そんな事はありませんよ」
祐斗は少し安心したように、溜め息を漏らした。行くとなれば西原ではなく、もしかしたらむつか颯介が、付き添ってくれるのではないかと思ったのだ。
一通り書類を書き上げ、祐斗はそれを確認しながら、山上に言われた通りに料金の事なども話した。
初めて最初から最後まで行う、という事で説明もたどたどしかったが、吉岡は何か質問する事なく、あっさり了承した。
「では、今夜宜しくお願いします」
「はい。こちらこそ、宜しくお願いします」
意外なほどにあっさりと話がまとまり、吉岡はにこにこと帰っていった。
見送りを終え、祐斗は書いて貰った書類をファイルに入れデスクに戻った。
「上手く出来たか?」
疲れた様子の祐斗の為にか、山上がコーヒーを入れてきてくれた。祐斗は有り難く受け取ると、苦笑いを浮かべた。
「終わってみないと何とも言えませんよ」
祐斗は、言ってから自分の言葉に少し驚いた。
「そりゃ、そうだな。今夜行くのか?」
「はい。行ってきます」
「んーどうするかな。夜か…むつか湯野ちゃんサポートにつけるか?」
「いえ、大丈夫です。霊視だけですし、初めて任せて貰えたんですし最後まで一人でやってみます」
山上はまじまじと祐斗の顔を見た。
「え、何ですか?」
「いやいや、むつの言う通りだなぁと…ま、頑張れよ。二人には一応言っておくから、何かあれば電話しろな」
「あ、はい」
祐斗は首を傾げつつ、コーヒーをちびちび飲みながら、夜の事について考えていた。




