ひとりきり
「お待たせしました。今夜、大丈夫ですので、伺わせて頂きます」
祐斗がそう言うと、吉岡は嬉しそうに何度も頷いていた。それを見て、頼りにされてるんだ、と思うと祐斗は嬉しくもあり、頑張ろうと思えた。
「何時頃に伺ったら良いですか?」
「そうですね…暗くなる頃。17時ではどうですか?」
「分かりました。でしたら、あ…住所は?あ、そうだ忘れてました」
相談室のすみに置いてある事務机の引き出しを開け、祐斗は何枚かの紙を出した。
「申し訳ありません、こちらにご記入を。仕事依頼書になりますのでご記入をお願いします」
「あぁ、はいはい。住所はここに書けば良いですね?えっと…谷代さんは何で来られますか?電車とかなら駅まではお迎えに行きますので」
吉岡はボールペンを受け取り、さらさらと書き込んでいく。
「そうですか?そうして頂けたら助かります」
素直に祐斗は吉岡の好意に甘える事にした。何しろ、あまりあの辺の地理には詳しくないのだ。住所を手掛かりに、向かうには自信がなかった。
「では、17時に待ち合わせで…そう言えば昨日のお連れさんは今日はお休みですか?」
「え?」
西原の事を言っているのだと思い出し、本当の事を言うかを迷った。
「あぁ、あの人は今日午後からですので」
「もしかして、いらっしゃる時は誰か他の方もご一緒に?」
「可能性はありますね…ご迷惑ですか?」




