そんなひも
山上がくわえているタバコの灰が長くなり、落ちそうになっている。西原は灰皿を持ち上げて、その灰を受け止めてやってから苦笑いを浮かべた。
「…何だ、それ…まじでか?いや、待て待て。お前の見間違いだろ?どう見てもむつは…ま、まぁ…いいや。で、いつ見たんだ?旅行中は、朋枝さんかこさめちゃんかお前と過ごしてただろ?」
「その前です。戸井さんの所で、話をした帰りに宮前さんがタクシー乗り場まで送ったじゃないですか。で、俺はむつの鍵を届けに行って…」
「帰り際に、か?」
西原は溜め息と一緒に煙を吐き出した。その様子を見て、本当にそうだったんだと山上は思ったようだ。
「送りに行って別れ際にか…あのみやが?道端で?やるなぁ…」
余程意外なのだろう。山上は感心したように、やるなぁともう1度呟いてから、はっとしたように西原を見た。
「いや、見間違いだろ。あのみやがだぞ?あいつ、まぁまぁ硬派っていうか…そんな事するってよっぽどだぞ?まじで…あいつら…」
「だから、俺も焦ったんです。そのせいでかなり泣かせましたけど…結果的には距離が近くもなった気もしますけど」
「…よし、本人に聞こう」
「えぇっ!?だ…ど…どっちに!?」
「どっちが聞きやすい?」
「どっちも嫌ですよ。どっちも絶対にはぐらかしますって…」
「はぐらかしたら、そうって事だろ?否定しても…あいつら、たまーに嘘つくの上手いからな。特にみやは。だから、むつに聞いたら良いだろ?聞いてやろうか?」
「むつに聞くなら自分で聞きます」
「つーか、お前は告白しないのか?まぁ告白なんて歳じゃないかもしれないけどな」
とんっと灰を落とした西原は、それこそ苦々しく笑った。告白出来るなら、とっくの昔にしてると言いたかったが、西原は言葉を飲み込んだ。




