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そんなひも
「何してんですか…」
呆れた西原は、この携帯の事もきっと呼び出された理由の1つだろうなと思っていた。携帯を受け取り、操作しながら口の中を噛んだ西原は、じんわりと広がる鉄のような味を茶で流した。その自分の血の味を感じた西原は、ふっと何かに気付いたように顔を上げた。
「どうした?」
「え…いや、何か…何か思い付いた事があったような気がしたんですけど…忘れました」
「一瞬の閃きだな」
「その一瞬を忘れないのが天才なんでしょうけど…残念な事に俺は違うんですよね」
「お前は努力の秀才でいいんだ。そもそも刑事が努力なしに成り立ってたら常に早期解決してる」
「それもそうですね。それで…アプリはアンインストールで良いんですね?」
「…頼む」
西原はむつが入れたというアプリをアンインストールさせて、待ち受けの山上を見て、ぷっと笑ってしまった。
「むつがな、自撮りするなら斜め上からくらいが良いって言ってたんだ。待ち受け…何か他のに変えてくれ」
「どれに変えるんですか?警視正みたいにむつを待ち受けにでもしますか?」
「…いや、元々ある待ち受けのやつないか?」




