ひとりきり
「娘さんを殺した犯人に悪戯をってやつですね?」
吉岡は照れ臭そうに笑った。
「昨日は勢いであんな事を言っちゃいましたが…よくよく考えたら、娘の霊が本当に居るのかも分かりませんし、先ずはそこからですよね…それで、何か証拠となるものでも見付かれば警察に届けてって思ってます」
祐斗は少し驚いた。昨日は、勢いもよく娘を殺した犯人に仕返しを、と息巻いてたのが嘘のような落ち着きぶりだった。
「ですので、うちに来て娘の霊が居るか見て頂きたいのです」
「あ、そうですね」
「では、今夜来て頂けますか?」
今夜、と言われ祐斗は少し悩んだ。最後まで責任持って、と山上には言われたがどこまで勝手をしていいのかは分からない。
「ちょっと待っててください。予定を確認してきますので」
そう言い残し、祐斗は部屋から出た。
「どうした?」
デスクには山上しか居なかった。だから、お茶を運んできたのも、山上だったのかと納得した。
「社長、今夜来て霊視をって言われたんですが」
「お前が行けるなら行けば良い、ちゃんと料金の事も言っておけよ。お前に全部を任せるんだからな…あんまり待たせるな早く戻れ」
しっしと追い払われ、祐斗はすぐに吉岡の所に戻った。




