78/1310
ひとりきり
「失礼します。吉岡さん、おはようございます。お待たせしちゃってすみません」
祐斗は声をかけながら、吉岡の居るパーテーションで仕切られた所に入っていった。
声をなけられた吉岡は、祐斗が来たと分かるとぱっと笑顔を向けた。
「おはようございます。昨日はどうも…今日も早くからお訪ねしちゃってすみません」
「いえ、いえ。どうぞ…こちらへ」
社員である先輩二人の動きをいつも見てるからか、意外とそつなく動けているのでは、と祐斗は思っていた。
相談室に入ると、すぐに山上がお盆にお茶を乗せて持ってきた。祐斗はかなり驚いたが、山上は何も言わずにすぐに出ていった。
「あの、それで昨日のお話なんですが」
出されたお茶を一口飲むと、吉岡は待ちきれないかのように話を持ち出した。
祐斗は、ここから先どうしたら良いのかとごくっと唾を飲んで吉岡を見た。昨日は暗くて、よく顔も見えなかったが明るい所で見ると、無精髭に短く刈り上げた髪といい、ワイルドな雰囲気のする男だった。




