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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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てがみ

ばんっと扉が閉まる前に、すでに使用人は立ち上がっており廊下に向かって駆け出していた。


「ヤバいっ‼」


むつが叫ぶのと、扉がばきっと音をたてて割れるのは同時くらいだっただろう。ぎょっとした京井は、むつを抱えたまま走り出した。


「ちょー強ぇえ」


わぁと山上が走り出すと、颯介も笑いながら後に続いた。むつは荷物のように抱えられながら、ちらっと後ろを見た。


「颯介さんっ後ろ‼」


使用人の手が、颯介を捕まえようと伸びている。颯介はかかとに重心を置いて、きゅっと回ると軸足ではない方の足を振り上げた。使用人に当たりはしなかったが、使用人は怯むように立ち止まった。


「湯野ちゃんって足長ぇよな」


「…フルネーム出ちゃったわね」


山上と京井も加勢するつもりなのか立ち止まった。京井の手から下りたむつも、加勢をしようとハイヒールを脱いでストラップを指にかけるようにして持った。颯介の方に気を取られていたが、後ろからも足音がきこえてくる。


「…まさかの挟み撃ちみたいよ」


むつと京井、颯介と山上は背中合わせに立ち前後からやってきた使用人を前にしている。


「むぅちゃんは女の子ですからね、危ないので下がっててくださいね」


「ワンさんカッコいい‼でも、そう言われても…弱そうなあたしが狙われてる気がする」


使用人の視線はむつに向けられている。それをむつはよく分かっているからか、悔しそうにぎりっと歯を噛み締めた。


「負けん気強いですよね」


「そんな事ないって。何か、バカにされてる気がしてムカつくのよ…檻になんか2度と入るかっ‼」


使用人がむつ目掛けて走り込んでくると、京井はさっと壁側に避けた。むつは避けもせず、ぐっと拳を握りしめて使用人の走り込んでくるタイミングに合わせて尽き出した。ごすっと鈍い音がしたと思ったら、びたんっと使用人が背中から床に落ちていた。右手で腹を殴り、すかさず左手で相手の袖を掴んでいたむつは、くるっと回り腰を落として背中に乗せて投げていた。京井が感心したように、おぉと言っている。だが、むつが使用人を投げたせいで、颯介と山上が使用人に挟まれる形になった。


「こらぁ‼むつっ‼」


「あ、ごめん…大丈夫!!社長強いし」


すっくと立ち上がった使用人が山上の方に目を向けたが、それより先に山上の手が使用人の顔を掴んで壁に打ち付けていた。


「容赦なさすぎて怖い…」


「皆さん本当に喧嘩慣れされてますね」


「実戦経験積んでるって言ってよ…にしても、その使用人はやっぱり人じゃないわね…重みが全くない」


「投げるのに上手く入ると重さは感じないって言いますし、それでじゃないですか?」


「違うと思う。流石に引き手だけで投げれるほど、あたしゃ強くないわよ」


「むつの言う通りだな。軽すぎる…湯野ちゃん、伏せろっ‼」


ぐいっと使用人の顔を持ち上げた山上は、颯介がしゃがむと同時に、もう1人の使用人に向かって投げつけた。


「人を片手で投げるなんて…社長はもしかして、怪力ですか?」


「違う。本当に軽いんだって…それより、今のうちに逃げるぞ」


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