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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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てがみ

大きく大きく揺らすと、ロープが水についた。むつは、ちゃぷっと足首辺りまで沈み込ませて、素早くしゃがんで腕をプールの中に突っ込んだ。そして、溺れている者の背中を掴んで、立ち上がりつつ力いっぱい引き上げてやった。


「…っ‼大丈夫?」


何とかロープに腕をかけた男に向かって、むつが声をかけると、男はびっしょりと濡れた顔を上げて頷いた。


「た、助かった…ありがとう」


「なら良かった…ロープ掴んだまま端まで行って上がりなよ?それは出来そう?」


「大丈夫…ありがとう…」


形勢逆転のチャンスだと思ったが、思わぬ所で足止めをくってしまったからか、他の参加者はすでにプールを渡りきっているようだ。最後に残されたのは、むつと溺れかれた男だけだった。


「…ビリっけつかぁ」


「ごめんなぁ…助けて貰ったから…」


「あ、いいって。いいって…それにしても、係りの人とか居ないのかしら?このまんまじゃ、上がれそうにもないね。とりあえず、端まできてよ」


すたすたっとロープを渡りきったむつは、プールの端から男に向かって手招きをした。男がロープを掴んで大人しく端までやってくると、むつは手を差し伸べてやった。男が手を取ると、むつはんーっと唸りながら男をプールから引き上げた。


「…はぁ…助かった。本当にありがとう…」


「うん。さて…とりあえず参加してるし、ビリでもゴール目指してくるね。じゃあ、また後でねーっ」


むつは男に手を振って、急ぎもせずにぱたぱたけ駆けて行く。どうせ、もうビリなのは分かっているからか、ゴールまで行って皆と合流すればいいかという程度の気持ちだった。参加したからには、勝負事だし勝ちたかったが、負けでもそんなに悪い気分ではなかった。

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