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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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てがみ

身体能力の高い妖が居るようで、遅れを取ったむつだったがあまり、焦りは感じない。だが、競走というのであればやはり勝ち負けがある。と、なると負けたくはない。今の所、むつが最後尾なようで他の参加者の背中はすでに見えなくなっている。むつは、真剣な表情を浮かべて走っていった。


ロープの次はハードルが置いてあり、それを潜っていくようだった。ドレスが地面につくのも気にせず、むつはそれらを潜っていく。妖のする障害物競走と言っても、運動会の障害物競走と変わりない。最後は、パン食いだったりしてとちらっと考えたむつは、何だか楽しくなってきていた。願い事が叶えられるとかよりも、競技事態が面白い。


ハードルを潜り終えたと思ったら、次は布で出来たトンネルを潜らされた。そして、あっという間に最初に見たプールまでやってきた。細いロープがあり、それを渡っていくようだ。これは流石に落ちないようにと慎重になっているのか、他の参加者たちの背中が見える。


終盤に差し掛かる所にきて、逆転のチャンスがありそうだと思ったむつは、そっと細いロープに足を乗せた。バランス感覚には、多少の自信がありむつは難なく渡っていくが、半分きた所でロープが緩んだかのように、急に沈みこんだ。たゆん、たゆんっと大きく揺れて、水面ぎりぎりまでロープが沈む。だが、むつは大きく1歩を踏み出して少しだけ身体を横に向けて揺れに耐えた。上下に揺れるのであれば、膝を柔らかくして揺れに抵抗せず、重心をずらさないようにだけすれば耐えられる。


揺れが落ち着いてきた頃、ばしゃんっと横で水飛沫が上がった。耐えられなかった参加者が落ちたのだ。泳げないのか、がぼがぼともがいている。そんなに深いプールなのかと、むつは思いながら見ていた。


落ちれば、係りの者が助けにでも来るのかと思っていたが、それは無いようで来ない。落ちた者は、必死にもがいている。折角揺れが落ち着いてきて、すぐに渡れそうだというのに、むつは動かない。勝敗は大事だが、溺れている者をほっておく事は出来ない。


「…あぁ、もうっ‼」


膝を曲げて、重心を落として収まってきた揺れを自ら大きくさせたむつは、その勢いを借りて、隣のロープに飛び移った。


「おおっ…わっ…っと…」


飛び移ったが、バランスを崩しかけむつは両手を広げて何とか体勢を整えた。そして、ロープを再び揺らした。

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