ひとりきり
「おじさん…吉岡さん、か。吉岡さんは何で娘の遺体も上がってないのに殺されたって分かるんだ?それに犯人もどうやって見付けた?」
当然の疑問を西原にぶつけられた吉岡は、少し黙って唇を噛み締めた。
「娘が夢に出てきて、そう言うんです‼だから、何としても…せめて遺体だけでも」
「そう、ですか…で、それを何で彼に頼むんですか?初対面だっていうのに」
「彼は普通の人と違う物を持っているでしょう。それは、わたしも同じなので何となく分かるんです。だから…」
西原は、ふぅん?と言うと祐斗を見た。そして、後は任せると言わんばかりに、祐斗の肩を叩いた。
「あの、ここでは何ですし…明日。会社に来て貰えますか?僕のバイト先は、少し変わってて、霊的な物とかに関わる仕事なので」
祐斗は財布を出し、もしもの時ように、出した事はほとんどない名刺を取り出した。そして、それを吉岡に渡した。
「会社なら、もっと詳しく話の出来る人も居ますし、ゆっくり聞く事も出来ると思いますので」
吉岡は渡された名刺を見た。
「分かりました…そうですね。こう引き留めて話す事じゃありませんね。すみません…では明日伺わせて頂きます」
ぺこっと頭を下げると、吉岡は振り返りもせずに足早に遠ざかっていった。祐斗は何とか、出来たのかなと安心したような顔だったが、西原は険しい表情のままだった。




