てがみ
舞台の中央にライトが当てられた。ざわついていた、ホールの中がしんっと静まり返ると、ごんっごんっと重たい足音をさせて男が、舞台に上がった。中央に置かれたマイクの前に立つと、ホールの中をゆっくりと見回した。主催者なのか、その男は顔全体が隠れるような仮面をつけている。
「…仮面の男って嫌だわ」
何を思い出しているのか、むつが呟くように言うと、よろず屋の3人と京井も頷いた。
仮面をつけている男はホール全体を見渡していたが、少しだけその視線が止まったようだった。
「…見られてる気がする」
「明らかに、見てますよ。スズキさんお知り合いの方なんじゃないですか?」
「知らない…と思うけど」
むつが首を傾げると、仮面をつけている男の視線が動いた。改めてホールを見渡してから、マイクの位置を調節した。スイッチが入ったのか、ざざっと音がした。
「こんばんは。本日はご多忙の中お集まり頂きまして、まことにありがとうございます。何度かご来場くださってる方は、すでにご承知の事と思いますが…只今より、本日のメインイベントを執り行わせて頂きます」
仮面をつけている男が、淡々とした口調で言うと、ホールの中が少しざわついた。むつは何が始まるのかと、楽しみ半分、不安半分だった。
「…今年もまた優勝者には、どんな願いでも1つだけ叶えて貰える権利が与えられます。ちなみに昨年は遊園地の1日貸切りでした」
「…子供か」
ついといった感じで、むつがぼそっと呟くと、両隣の山上と京井が同時に頷いた。だが、祐斗だけはいいなーと言っている。
「今年の勝負方法ですが…先ずはじゃん拳で参加者を絞り混みます。その後は…その都度、ご説明いたします。さぁご参加される方は前の方に。見守られる方は後ろへお下がりください」
男がそう言って、マイクの電源を切った。




