てがみ
山上と共に颯介と祐斗も顔を見せた。むつは、ぽんを3人に紹介して聞いた話を手短にした。
「ワンさんにスズキさんな。で、俺はまんまの社長に…くださんにれいさんか…ややこしくて嫌んなりそうだ」
山上は颯介を指差してくださん、祐斗を指差してれいさんと言うと、颯介と祐斗は頷いた。そして、むつと京井の偽名を聞いて、ちゃん付けのが可愛いのにと笑った。
「で、何か分かったのかしら?」
「いいや。む…じゃないスズキが今、話してくれたぽんさんの話以上の事は分からなかったな…」
颯介と祐斗も同じなようだった。
「でも、あまり…バラバラに動かない方が良さそうな気がしてます。何か、いやぁな視線を感じたりして…」
「それは…れ、れいがあれだからほら…」
むつは何か言いにくそうにしている。呼び慣れない名前のせいか、言いたい事さえもあやふやになっている。何が、あれでほらんだか分からず、祐斗は首を傾げて困ったような笑みを浮かべていた。
「スズキさんもなかなか注目浴びてるみたいだけどね。美人な人間って…人間って言うって事は、彼らは人じゃないって事かな?」
「たぶん、みーんな…妖」
ぼそっとむつが言うと、颯介と祐斗はすっと目を細めた。やっぱり、そうなんだと言いたげな顔だった。
「…ま、その催し物も始まるみたいだし。楽しみに待ってよっか」
むつはシャンパンを一口呑んで、奥の方にある少し高くなっている舞台を見ていた。ホールの中の明かりが少し落とされ、オードブルの並んでいたテーブルが静かに片付けられていく。シャンパンを呑み干し、むつはボーイを呼び止めてグラスを片付けて貰った。




