ひとりきり
「あの…それで僕にご用件というのは?」
祐斗は人目がなくなったからか、落ち着いて優しく男に聞いた。男は話を聞いて貰えると分かり、ほっとした様子だった。
西原は祐斗の少し後ろに立って、じっと男の顔を見ていた。
「わたしの娘は去年殺されたんです」
男のいきなりな発言に祐斗は驚き、何も言えずに黙った。側で聞いていた西原は、首を傾げつつも男を見ていた。
「その犯人を見付けたのに、警察は何もしてくれなくて…娘の遺体も見付からないし…仕返しをしたい、とまではいかなくても驚かせて大人しくさせたいんです」
祐斗は困ったように、西原を見た。西原も困惑してるのか、困ったような顔をしている。
「うーん…先ずさ。おじさん、名前は?」
困りきっている祐斗が代わりに、西原が男と話をしようとしている。
「あ…すいません。吉岡と言います、お兄さんはお連れさんですか?」
「えぇ、まぁね。彼と一緒に仕事した事もあるんでね…けど、驚かすって言うのは仕返しがてらの悪戯って感じですか?」
「そうです‼そうです‼そのくらいしないと、気持ちの整理がつきませんから」
吉岡と名乗った男を西原は、胡散臭いものでも見るようにみていた。暗いのが幸いしてか、無遠慮に眺めていても気付いていないようだった。




