てがみ
着替えを終えた颯介、祐斗、京井もやってきてロビーにやってきた。むつと山上は、3人を見てあぁと言った。
「遥和さんは、いつも通りの紳士だけど…颯介さんはちょっと怪しい営業のサラリーマンで祐斗は就活中の大学生って感じね」
「大学生ですから」
「燕尾服は?」
「あれはちょっと…京井さんだって燕尾服じゃないんですよ?だから…」
「まぁね」
祐斗の言わんとしている事が分かるのか、むつはくすくすと笑って、改めて3人を見た。颯介は見えるよう入れているハンカチが、祐斗はカフスボタンが、遥和は細身のネクタイが、むつと同じワインレッドの物だった。
「…皆、お揃いだね」
スカートの裾をちょいっと持ち上げてむつが言うと、遥和がにっこりと微笑んだ。男性陣もむつのドレスの色に合わせるように、ワインレッドの服の一部に取り入れている。
「今夜の俺はお姫さんをお守りする役目だからな。ま、湯野ちゃんと祐斗はいつもの事だけど」
山上はそう言って立ち上がると、ぶっきらぼうにむつに手を差し伸べた。むつはその手を取って立とうとしたが京井が留めた。
「…待ってください。むぅちゃんの最後の仕上げがありますから」
「まだ待つのかよ…」
折角、立ち上がったのにと山上はぶつぶつ言いながらまたソファーに座った。颯介と祐斗は、格好のつかなかった山上を見てけらけらと笑っていた。




