ひとりきり
祐斗は初めて誘われた事もあり楽しげに、西原は渋々といった感じで、大柄な男たちと連れだって道場を出た。
がっちりとした身体つきの男たちと自分が、一緒に居る事が何だか不思議で浮き足立っていた祐斗だった。だが、突然がしっと腕を掴まれ尻餅をつきそうになった。
「あ、あ、あの‼先程、道場でお見かけしまして…その、あの、え…っと」
暗くてよくは見えなかったが、50代くらいの男だろうか。そんな男が、祐斗の腕を力いっぱい掴んでいた。
「え?はい…何かご用ですか?」
びっくりはしたももの、祐斗はとりあえず用件を聞こうと話しかけた。
道場で一緒に汗を流した男たちも、何があったのかと祐斗の方を見ながら、立ち止まっている。
それが気になるのか、男はちらちらと見ながらも、大きく深呼吸をした。
「普通の人にはない力がありますね?是非、ご協力をお願いしたい事が…」
男は小声で、それでもしっかりと強い意思を感じさせるように言った。祐斗は、何の事を言ってるのか分からなかった。
「谷代どーしたー?」
「あ…知り合いなんです。後から行くんで場所教えてください」
祐斗はとっさにそう言った。
道場から一緒に出てきた男たちと祐斗の間くらいに居た、西原には祐斗の腕を掴む男の声が聞こえていたのか、呑みに行く場所を聞くと祐斗と共に残った。




