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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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てがみ

「手紙の事なんですが…」


「うん?」


吸いかけのタバコを揉み消したむつは、真面目な顔つきとなり京井の方を向いた。


「去年も届いたんです。差出人の名前もありませんでしたし…悪戯か何かだと思って、破棄したんですが」


「それが今年も来たと…」


「えぇ。妖が絡んでるとすると、あまりよくない事が起きそうな気がしますが…それでも行きますか?」


「そうね…変な手紙だし、関わらないのが1番だとは思うわよ。遥和さんが気にしてるなら尚更…」


「でも、行きたいのですね?何がそんなに気になってるんですか?文面としては、おかしな事はありませんけど」


「文面はさ、凄く丁寧だよね。突然の事で失礼とは思いますが…なんて出だし。人でもまぁそこまで気を回せる人少ないもん。それが出来るってなると、よほど頭がいいのか、腰が低いのか」


「腰が低いように装ってる可能性もありますよ?私のように、人の社会に出て生活してるとなれば…知恵はつくでしょうから」


「確かにね。かなりの切れ者だと思う。かなりの切れ者かかなりの善人か…」


「…切れ者は悪い人前提ですね」


呆れたように京井が言うと、むつは肩をすくめて見せた。風呂上がりで、バスタオルを巻いてるとはいえど、毛先からぽたっと水滴が落ちた。京井は立ち上がり、備え付けの冷蔵庫から水を出すとコップに注いでからむつに渡した。


「ありがと」


「いえ。それで…この招待状を寄越した者が悪者だったら、どうします?むぅちゃんは能力使えませんし、他の3人だって攻撃力のある能力を有してるわけではありませんよ?」


「それよね…1人で行くの嫌って言ったけど、1人の方が良かったかもしれない。何かあっても、自己責任で済ませられるけど…」


むつが言い出したから、渋々他の3人も行く事になったのだ。その3人が危険な事に巻き込まれた時、むつにはきっとどうする事も出来ないだろう。

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