てがみ
「頂きますね」
濃い色をした茶をすすり、テーブルに戻した京井はジャケットの内ポケットに手を入れた。そして、取り出した物をそっとテーブルに置いた。
「…遥和さんの所にも?」
「えぇ。今朝、会社事務所のポストに入ってました。差出人はありません。パーティーの招待状です」
「見てもいい?」
京井が頷くと、むつは封筒を取って中の便箋を取り出して、目を通した。書いてある事は同じだし、字も几帳面な綺麗で読みやすい字だ。
「…書いた人、同じなんだろうね」
むつはよろず屋に届いた封筒も開けて、便箋を広げて見せた。どちらも同じ綺麗な字で書かれている。内容はまったく同じで、下書きがあってそれを写したかのようだった。
「…むぅちゃん?」
京井の所に届いた封筒には、宛名に京井遥和様と書いてある。むつはそれをひらひらと顔の前で振ってから、鼻を押し付けてくんくんっと臭いを嗅いで、少し嫌そうな顔をした。
「どぶっぽい臭いする…臭い」
「…むぅちゃん、鼻が敏感になってます?確かに、臭い手紙ですよね。どぶのようで、生臭い…」
「やっぱり?遥和さんが言うなら、そうよねっ」
意見が一致した事が嬉しいのか、むつがはしゃいだように言ったが、京井は喜べないでいるようだった。
「それってさ、人からじゃないと思うの…遥和さんはそこら辺どう思う?」
「えぇ、私もそう思います」
「やっぱり…」




