てがみ
月末だからか、請求書ばかりだった。だが、むつは1枚の手紙を見て、首を傾げた。宛名はよろず屋御中となっているが、差出人の名前はない。むつはとりあえず、中身を見ようかとペーパーナイフで封を切った。手紙を開いてみると、便箋には几帳面な文字が並んでいる。
「…何これ」
「どうしたんだ?」
便箋の文字を最期まで読んだむつは、うーんと首を傾げながら立ち上がると山上の独立してあるデスクに向かった。
「招待状っぽいけど。今夜なの」
むつから便箋を受け取った山上は、さっと文字に目を通した。そして、むつに返して少し首を傾げていた。
「パーティーの招待状だな…でも、差出人の名前もないし。どういう事だ?こん中で、パーティーに招待状してくれそうな知り合いを持ってるのはむつで」
「遥和さん?有り得そうだけど」
「京井さんなら有り得そうだな。でも、それならむつに言うかちゃんと差出人として名前書くだろ?」
「うん。だから、遥和さんじゃないはず」
「ってなると…誰だ?」
むつには何の心当たりはない。山上は颯介と祐斗の顔を見たが、2人共まったく心当たりがないようで、首を横に振っているだけだった。山上にも当然の事ながら、心当たりはない。
「さぁ?知らないけど…行く?」
行きたいと言わんばかりに、むつは山上に言っている。山上は誰からの招待状なのか分からないだけに、良いとは言えない。
「あ、でもパーティードレスないかも」
「じゃあダメだろ?」
「こんな時だからこその遥和さんっ‼」
「おいっ‼」
便箋を山上の机の上にぽいっと置いたむつは、自分の机の上にある携帯を手に取った。山上の制止も気にせず、むつはすぐに電話をかけ始めた。




