おてつだい
むつは手早く朝食の支度をして、菜々に運ばせた。全員が目覚めて、しゃきっとしだした頃には、テーブルにはご飯と味噌汁、アジの開きに卵焼きと和風な食事が並んでいた。
「むつは…本当にいい嫁になるぞ」
山上は豆腐とネギの味噌汁を飲みながら、ほっとしたような表情を見せている。1人暮らしをしている颯介、祐斗、西原もまともな朝食を食べる事はほとんどなく、山上の言葉に深く頷いていた。
「…で、そのむっちゃんは?」
「むつなら、病人に朝ご飯持ってって、今夜の事を聞いてくるって言ってましたよ」
菜々が答えると、颯介は頷いた。いくら仕事を請け負ったといっても、代行で行うような物だ。依頼主からの指示は仰がなくてはならない。皆が食事を終えそうな頃、むつが戻ってきた。
「おはよ…っても、もうお昼だけど。で、このあとは荷物の再チェック。で誰がどこを回るかを割り振って、仕訳をして積み込む。で、出発になるんだけどね…どうしよっかな…」
席について、むつは冷えてしまった味噌汁を飲みながら、誰がどこを回るかを考えているのかもしれない。
「…遅くなるのはよくないし、細かく分けよっか。颯介さんは1人でも大丈夫そうだけど…」
後の4人を1人で行かせるのは心配だとむつは口には出さなかったが、そう言いたそうだった。
「なら、俺と西原で、祐斗と朋枝さん。で、むつ1人でどうだ?」
「妥当かな」
「おい、西原。嫌そうな顔すんなよ」
「そりゃ嫌ですよ。何で、おっさん2人で子供たちにプレゼント配りに行くんですか?しかも、いかついし」
「サンタクロースもおっさんだろうが」
「…確かに」
「むつが嫌じゃないんなら、むつと一緒でもいいんじゃないか?配達先って、地図とかあるんだろ?迷わず行けたらいいんだよな?」
「ううん?ソリを引くトナカイの中のリーダーさんが居るから、その子に行き先のリストを見せたら、大丈夫だって。だから、出発前にはトナカイとも話をしないと」
「何かすげぇな…サンタクロースってサンタクロースじゃなかったら、ただの配達業者みたいなもんだな」
「…夢がなくなるから言わないで。じゃあ、あたしと先輩で行くね。で、祐斗と菜々。祐斗と菜々の所を手伝うように、颯介さんと社長が1人で…で良い?」
「分かった。そうしようか…だから、むっちゃん。ちゃんとご飯食べないと。箸が止まったままだよ?」
颯介に指摘されたむつは、こくっと頷くと卵焼きを一口サイズにして口に運ぶと、もぐもぐと咀嚼していく。




