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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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おてつだい

むつは広々としたキッチンというより、もはや厨房で2人のサンタ用もを兼ねて、大きな土鍋にたっぷりと煮込みうどんを作った。仕事が終わった祐斗と菜々が戻ってきてから、厨房のすぐ近くの食堂で皆で鍋をつついた。


「…おい、むつ?寝るなよ?」


後は洗い物して寝るだけだと思うと気が抜けたのか、うどんをよそった椀を手にしながら、うとうとしている。西原がむつの手から椀を取って、テーブルに置くとむつは箸を置いて大きな欠伸をした。


「終わったら言って…片付ける…」


椅子に横向きで座り直したむつは、西原の方を向いて背もたれに顔を押し付けるようにして目を閉じた。よほど疲れているのか、あっという間にくぅくぅと寝息をたて始めた。


「…寝ちゃったよ」


「むつね、最近何でか寝るの早いのよ。日付変わる頃にはもう寝てたりして…だから、よく頑張ったと思うわよ」


「そうなのか…疲れてんのか?」


「疲れてるだろうな。今日もだけどここ2、3日祐斗のミスが多くて。今日は流石に指摘してたけど…他は何でかむつが修正かけてたぞ」


山上が嫌味のように言うと祐斗は首をすくめた。多くのミスを指摘されたのは今日だけで、あとはきちんと出来ている物だと思っていた祐斗は、申し訳ない気持ちになっていた。


「今の仕事は大丈夫だろうな?」


「たぶん…」


「大丈夫ですよ。わたしも確認しながら行ってますし…ね、谷代君」


菜々がフォローをしてくれたが、結局自分1人では何も出来ていないのかと思うとますます落ち込む。


「まぁまぁ…むつは甘いからね。甘えといたら良いんじゃないかな?谷代君にしか出来ない事もあると思うし、その分頑張ろ‼ねっ?」


菜々が言うと、祐斗はほんのりと笑みを見せた。颯介と山上はうどんをすすりながら、2人のやり取りを見ている。山上が何か言いたげに、西原の方を見たが西原は、ゆるゆると首を振っただけだった。


「じゃあ…祐斗君、むつの代わりに片付け頼むよ。俺は、こいつ連れてく…って、どこに?部屋とかあるんでしょうか?」


「あ…分からんな。そこにトナカイ居るし、聞いたら良いんじゃないか?」


ほれと山上が指差すと、ドアの前にトナカイが鎮座している。トナカイに話掛ける事に、抵抗があるようだったが手招きをしてみると、トナカイは大人しくやってきた。


「むつを寝かせたいんだけど…むつもですが、我々も仮眠を取れる部屋はありますか?」


トナカイがこくっと頷くと、西原は微妙な笑みを浮かべた。喋りはしなくとも、言っている事は分かるようだ。ついてこいとでも言いたげに、先に歩いていきドアの前で止まって西原の方を振り返った。


「…じゃあ、祐斗君あとは頼むな。すみませんが、お先に失礼します…何時間後に集合でしょうか?」


「さぁ…むつが起きたらで良いだろ?この仕事は、むつメインの俺らはサポートだからな」


山上が言うと、西原はコートを持ってむつを軽々と持ち上げると、案内役のトナカイの方に向かっていった。


「…先輩って意外と力あるのね。それに、むつも抱っこされて起きないなんて…よっぽど安心しきってるみたいだし」


菜々は少しだけ羨ましそうに、西原に抱き上げられて出ていくむつを見送っていた。



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