表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
708/1310

おてつだい

3人を乗せたソリは、濃い霧の中に入っていき、今度はゆっくりと降下していった。生暖かい風が吹く、湿度の高そうな所にやってきた。


「わぁ…お城だ」


霧を抜け、ソリが平地をゆっくり滑っていき、大きな城の前で止まった。桁違いな大きさの城に、菜々は呆然としている。


「むつ、誰かに招待されたって事?」


「さぁ?でも、城に連れ去られたってなると…良い方向な事は思い付きませんけど」


「悪い魔女とか居そうだもんな」


先に降りた西原は辺りを見回した。じっとりとした空気が肌に張り付くようで、少し気持ち悪い。夜だったはずなのに、霧を抜けたら昼間のような明るさだし初夏のように暖かい。


「なぁに…ここ。何か変じゃない?」


「変ですね…ここは…」


人が立ち入って良い場所ではないと祐斗は言いかけて、口をつぐんだ。そんな事を言って、菜々と西原を不安がされても何も始まらない。それに、何やら慌ただしい気配がしている。はっきりと聞き取れるわけではないが、遠くの方でざわついているのが分かる。


3人を導いてきて、むつの手紙を持ってきたトナカイが、再び案内をするかのように、ゆっくり歩き出した。3人はどこだか分からない場所に来ているからか、大人しくトナカイに従ってついていく。


トナカイは城の横を通って、とことことどこかに向かっていく。城の周りには何も無さそうで、濃い霧が立ち込めているだけだった。トナカイの後を追って、ずいっと祐斗が霧の中に入っていくと、菜々は心細いのか祐斗の袖をきゅっと掴んだ。


「大丈夫ですよ。行ってみましょう」


祐斗が手を差し出すと、菜々はおずおずとその手を取って、一緒に霧の中に入っていく。西原はそんな2人を後ろから、つまらなさそうに眺めていた。


霧の中を歩いていくと、ぼんやりと小屋のような物が見えてきた。縦長のビニールハウスのような小屋からは、がたがたとごそごそと忙しなく物音が聞こえている。トナカイはその小屋の前で止まって、3人の方を見た。


「ここ…?」


トナカイは頷いてみせると、前足でドアを押した。きいっとドアが開くと、中から声が聞こえてきた。


「…むつの声だわ‼」


祐斗を引っ張って、菜々はドアを大きく開けて中に入った。祐斗と菜々は、中に入ったものの、どういう状況か分からずに足を止めた。


「あ、やぁ祐斗君。遅かったね」


にこにこと手を振っているのは、祐斗も菜々も西原もよく知っている顔だった。祐斗のアルバイト先の上司でもある湯野颯介だった。


「ゆ、湯野さん?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ