表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
706/1310

おてつだい

むつからだと聞こえたのか、西原と菜々が両脇から祐斗の手元を覗き込んだ。祐斗はドキドキしながら、結んであった紙を丁寧にほどいて広げた。綺麗で読みやすい字が並んでいる。


「むつさんだ」


「むつね」


「むつだな」


さっと文面を読んで、1番下を見た3人はむつからの手紙だと確信した。手紙の内容は、ざっくりとしていてトナカイと一緒に来るように、とのたったの一言。だが、その一言でもむつだと分かったのは、1番下にFrom M,Tとあった。そのTでむつだと分かる。


「…むつからっていうのは分かる。確実にそうなのよ、これ…でも、さっぱり意味が分からないわよ?」


「そうだな…トナカイと一緒に来いって…どこに?菜々ちゃんだけが行くのか?」


「朋枝さんだけじゃ危ないんで、俺も一緒に行きますよ」


「いや、まぁ…菜々ちゃんだけで行かせるつもりないけどさ…トナカイと一緒に来いって何だ?あいつ、必要な事は書いても最低限がないな…」


「何を今更…」


西原が溜め息をつくと、祐斗は慣れてますからと言いたそうな顔をしていた。菜々が慰めるように、肩をぽんぽんと叩いてくれたが、何の慰めにもならない。


「よしっ、じゃあ行こっか。ついて行けばいいんでしょ?早く行くわよ、さ案内してちょうだい」


話はついたと言わんばかりに、菜々はトナカイに向かって言うと急かせるように、ぱしぱしと背中を叩いた。トナカイは表情も変えずに、3人に背中を向けると小走りに走り出した。菜々が当たり前のように走り出すと、祐斗と西原も追い掛けた。


「何で…むつさんのお友達ってこうも肝が据わってるんですかね…」


「そりゃあ…むつの友達だからだろ?」


「朋枝さんって意外とたくましい」


「じゃなきゃ、むつの親友で幼馴染みなんて、やってらんないだろうよ」


ですよね、と呆れながらも何故か祐斗は嬉しそうに笑っていた。西原も何となく、祐斗が嬉しく思っている理由が分かるのか、笑みを浮かべていた。


トナカイを追い掛けて、走って行った先は駅の駐車場だった。トナカイはそこで歩調を緩めて、菜々を振り返った。


「…あ、ソリ。これに乗るの?」


むつが連れ去られた時と同じ様に、トナカイが8頭立てのソリが駐車場に停められている。


「もう…どういう事ですか?」


「さっぱり分かんなねぇな」


菜々がちょこんっと荷台に乗り込むと、訳分かんないと言いながらも祐斗と西原も乗り込んだ。3人をここまで連れてきたトナカイが先に走り出すと、8頭のトナカイもゆっくり走り出した。ぎしっとソリが揺れて、滑らかにコンクリートの上にすべっていく。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ