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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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おてつだい

むつが再び部屋に戻って来た時には、老人はトナカイに何か話しかけながらゆっくり粥をすすっていた。


「…うん、美味しいよ。ありがとう…向こうのじじいは起きたかい?」


「起きなかったので、窓を閉めて氷枕を敷いて、お粥はテーブルに置いてきました」


「世話をかけるね…初対面の方なのに…?」


「いえ、全然。大丈夫ですよ。トナカイも手伝ってくれましたし…ご主人思いのいい子ですね」


「…そうじゃな。むつさん…今、トナカイとも話したんだが…迷惑ついでにもう1つ頼まれてくれないか?勿論、よろず屋さんとして」


「お伺いします」


トナカイが押して持ってきた椅子に、むつは腰かけて老人の方を真っ直ぐに見た。階段上って、息を切らせて疲れきっていた様子など、微塵も感じさせない。むつは真剣な表情を、老人に向けていた。それを見た老人は、トナカイの方を見て、にっこりと笑った。


「いい人を連れてきたもんだ…むつさん、明日の夜には子供たちにプレゼントを配って回らなきゃいけない。だけど、見ての通りサンタクロースのはずのじじい2人はこんな状態…サンタクロースの代役をお願いしたい」


「…は、はぁぁ!?代役!?あ、あたしが?ど、どっ、どうやってですか?」


「ははっ、そう驚きなさんな。配りに行く先はトナカイが把握しておる。むつさんは行った先で、プレゼントを置いてきたら良いだけじゃ…簡単じゃろ?」


「簡単ですけど…」


「何も煙突から入るわけじゃない。このご時世、煙突のある家なんて…日本は特にないから…行けば、窓の鍵は空くから大丈夫じゃよ…引き受けてくれんかね?見付からないようにだけ、気を付けてくれれば…どうかな?」


「…面白そうですね。分かりました、お引き受けします。ですが、サンタクロースが2人で全国を?」


「まさか、まさか…支部分けされててな。わしとあのじじいでこの県内を担当してるんじゃよ」


支部分けと聞き、サンタクロースは会社勤めしている感じだなとむつは思った。仕事として引き受けると決めたむつは、サンタクロースから色々と説明を聞いて、ふんふんと頷いた。


「…1つ、こちらから提案が。あたし1人じゃ無理だと思います…準備ってあと24時間もないわけですから…ですから、応援を何人か連れてきても良いですか?」


「大丈夫な人たちかね?」


「勿論です。そこは、あたしが保証します」


むつが胸を張って言うと、サンタクロースはトナカイと顔を見合わせて頷いた。



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