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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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おてつだい

ダンスホールのように広々とした玄関の正面には、左右に分かれ、緩くカーブを描いている階段がある。真っ直ぐ行ってもどこかに通じているようで、薄暗い廊下が続いている。西洋のそれも格式ありそうなお屋敷とは、無縁のむつは興味深そうに辺りを見回した。


「凄い…すみまーせんっ‼」


むつは誰か居ないかと、大きな声で叫んでみた。むつの声がわんわんとこだまするだけで、どこからも返事がない。


「誰か居ませんかーっ!?」


やはり返事はないし、どこからも物音はしない。入ってきたものの、どうしたらよいのか分からず、むつは困ってしまった。ここがどこなのか分からないと、帰るに帰れない。むつは、腕にかけている上着のポケットから携帯を取り出した。菜々にとりあえず、無事を報告しようと思ったのだが圏外になっている。屋敷の中に居るからなのかと、外に出ようとドアを押した。


「あら?」


入った時にはすんなりと開いたドアが、びくともしない。押しても引いても、動く気配はどこにもない。苛立たしげに、ばしっとドアを叩いたむつだったが、諦めが早いのかは切り替えが早いのか。圏外になっている携帯をポケットにしまって、とことこと歩き出した。屋敷はそうとう広いはずだから、大きな声で叫んでも誰にも聞こえなかった可能性はある。本当は誰か居るかもしれないと思い、むつは階段を上がり始めた。


緩やかにカーブを描いているのは、お洒落だなと思ったが、カーブの分だけ段数が多くなっている気がした。むつは、せっせとせっせと階段を上がっていく。だが、どこまで上ったら最上階なのか分からないまま、息が切れてきた。足を上げるのも、そろそろ辛い。だが、どこかも分からず、携帯も繋がらない場所に1人で何もせずに居ると不安でたまらなくなる。出来る事は全てしてやろう、とむつはきっと目を細めて、大きく深呼吸をすると、かっかっかっかっとリズミカルに階段を上がっていった。

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