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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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おてつだい

ぶつんっと通話が切れると、西原は首を傾げた。冬四郎の機嫌が悪いのは、連続放火で疲れているからだろ。だが、車道の走るトナカイの通報がないのは変だった。


「…宮前さん知らないって。ふーん?トナカイどこに行ったんだ?この辺は、うちの管轄だから署に通報はあったけど…その後どこに行ったんだろうな」


冷えてきたコーヒーをすすりながら、西原は首を傾げていた。菜々の言った方向に行ったのであれば、冬四郎の勤めている署の管轄内に入りそうなものだが、そうなってないという事は、どこかに消えたのだろうか。


「…むつに電話するか。荷台に乗せられてんなら、電話くらい出れるかもな」


西原は、続けてむつに電話した。呼び出し音がする事もなく、留守番電話に切り替わった。


「電波が届かないか、電源が切れてるってさ。トナカイだもんな、森に帰ったかな?」


さしたる危機感もなく、西原がそう呟いてコーヒーをすすった。だが、口調は軽くても表情は険しい。西原がむつの事を心配していないはずがない。


「菜々ちゃん、写真もう1回見せてくれるか?」


頷いた菜々は、暗くなった画面を明るくさせて撮ったばかりの写真を西原に見せた。


「勝手に見てっていいか?」


「うん…他のはダメよ」


「見ないよ。見てもどうせ、むつとこさめさんとの写真ばっかりだろ?」


「うるさいわね」


菜々は西原が他の写真を見ないと分かっているのか、携帯を渡した。西原も菜々の携帯に保存されている写真にそこまでの興味はない。


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