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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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おてつだい

菜々が紅茶に口をつけて、ゆっくり飲んでほぅっと息をついた。身体が冷えきっているせいか、暖かい紅茶が喉を通っていくのが分かる。


「菜々ちゃんは、今夜むつと出掛けてたのか?」


「うん…ご飯に行って、食べ過ぎたから少し歩こうかって言って歩いてたの」


「食べ過ぎたから、ね…ダイエット?」


「まぁ…そこは細やかな抵抗ってやつなのよ」


もぅと言いたそうに、菜々は唇を少し尖らせた。すっかり落ち着き、いつもの菜々の調子を取り戻してきているようだ。菜々が紅茶に口をつけるまで、西原が一言も言わなかったのは、そういう事かと祐斗はちらっと思った。祐斗は西原の落ち着いた声と、それでも少しちゃかすような言い様に凄いなと感心をしていた。


「はいはい、乙女は大変だな。それで、歩いてて何でトナカイが出てきたんだ?森にでも入ったか?」


ここ日本だぞ?と西原が言うと菜々は笑った。むつも菜々も森には入ってないし、人通りのある道を歩いていただけだ。


紅茶をもう一口飲んだ菜々の方に、西原は灰皿を少しだけ寄せた。それを見た菜々は、鞄からタバコを出して火をつけると、細く煙を吐き出した。


「クリスマス間近じゃない?だから、何かの催し物かと思ったんだけど…大きなトナカイがソリを引いて歩いてたの」


「…ど、どこを?」


「え?道をよ。車道を。見る?」


鞄から携帯を取り出した菜々は、撮影した写真を2人に見せた。車道に堂々といる、大きなトナカイに大きなソリ。西原は携帯に手を伸ばして、祐斗と一緒に何枚もの写真を見ていく。


「すげぇな…何がってさ、菜々ちゃんトナカイとツーショットって。怖くなかったのか?」


「こんな近くで撮って…凄いですね。あ、むつさんも居る。触ってるし」


「2人とも、怖いもの知らず過ぎるだろ」


「むつは危ないから近寄るなって言ってたけど…あたしが…だから、むつが連れてかれちゃったのかな…」


「まぁ危ないって思うのが普通だな。角デカいし。でも、カメラ目線だし…かなり人に慣れてそうな感じだな。飼い主とか近くに居たのか?」


「ううん…人は居なかった。トナカイだけでソリを引いてたわよ」






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