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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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おてつだい

「菜々?そろそろ…って!!菜々っ‼」


シャッター音がしなくなると、ようやく終わったかと顔を上げたむつは、ぎょっとして駆け寄った。


いくら大人しいからと言って、菜々はトナカイの真横に、ぴったりと寄り添うように立ち、携帯を持ち上げて一緒に自撮りしている。


「ばかばかっ…いくらなんでもそれは…」


ぐいっとむつは菜々の腕を引っ張って、トナカイから引き剥がした。何事なのかと、菜々もトナカイも首を傾げている。菜々の仕草はさておき、トナカイがそんな仕草をするのは、何やら可愛らしい。


「…気が済んだでしょ?帰るよ?」


先頭にいるトナカイが人懐こそうに、すり寄ってくると、むつは笑みを浮かべて首の辺りをぽんぽんっと叩くようにして撫でた。危害を加えそうな気配はまったくないが、むつの背と変わらないくらい大きなトナカイは、やはり迫力がありすぎる。大きい物は重さが300キロにもなると、テレビか何かで見た記憶はあるが、それがすり寄ってくると流石にむつもじりっと後退した。


「むつは動物に好かれるよね?優しい人が分かるのかしらね?」


「さぁ?ほら帰るよ?」


名残惜しいのか、菜々はむつがトナカイを撫でている様子をカメラにおさめた。


「…そうだね。いつまでも立ち止まってたら、この子たちにも悪いもんね」


菜々もおそるおそるといった感じで、トナカイを撫でた。嫌がりもしないトナカイに菜々は、ばいばいと手を振った。



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