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ひとりきり
途中の駅で降り、急行電車に乗り換えた。休日であっても仕事帰りのサラリーマンで、車内は満員に近かった。
祐斗は運よく、しばらく開かないドアの前に立てた。ドアに寄り掛かり荷物を足の間に挟むように置き、ぼんやりとしていると眠くなってきた。電車はほとんどの駅を通過するだけで、祐斗の目的としている所までは1時間もあれば着く。
する事もなく、携帯でゲームでもしようかとポケットに手を入れると、かさっと何かが触れた。
むつからの手紙だった。手紙と言っても、可愛らしい大きめのメモ帳から切り取った紙でしかないが。
祐斗は初めて、自分にだけ宛てられたメモが嬉しくて捨てる事が出来なかったのだ。単純で初々しいにも程があると、自分で分かっていたが、嬉しいものは嬉しい。
むつの字は、女の子らしい丸文字なんかではないが、綺麗な字だった。仕事に関しての内容と、素っ気なくもお昼は鶏いちへ、と書かれた短い物だったが祐斗は無くさないように、そっと財布にしまった。




