672/1310
おてつだい
むつからそんな風に言われるとは思って居なかった西原は、目を見開いていた。驚きすぎて、何も言えない。
『でも、ごめんね…友達と居る時に。あの、また…明日、明日連絡するからっ』
「いや、待った‼待って…」
このまま電話を切られそうだと思った西原は、思わず大きな声で言ってしまった。はっとして口元を押さえて、辺りを見回したが、喧騒に紛れて誰も気にはしていないようだった。
「ごめん。待ってくれ…俺も、俺もだから…そう思ってたのは。その…」
引き留めたものの、言葉が出ない。電話越しにむつは聞いているのか、いないのか反応がない。
『ん…明日は楽しみにしてるね』
「あ、あぁ…俺も。今日かなり寒いし、風邪ひかないようにしてくれよ?」
『うん、呑みすぎないでね。じゃあ…また明日ね』
「ん、また明日…」
うん、と消え入りそうな声ではあったが、返事があった。そして、ぷつりと通話は切れた。
「いいなーっ‼」
西原が携帯をテーブルに置くと、拗ねたように祐斗は言って、携帯に何か連絡がないかと気にしている。だが、連絡は何もないようだった。




