おてつだい
「あぁ…気にしなくていいぞ、そんな事。明日は菜々ちゃんと過ごすのか?」
『どうだろ…先輩は?まだ予定とか…』
「いや、特には。非番だしな」
『えっ、あ…そうなんだ…仕事なのかと思ってた…そっか…そうなんだ…良いな、それならあたしも休みたい』
何か納得したように、ほんの少しむつの口調からほっとしたような雰囲気がしていた。
「…休んだら、お前も暇になるだけだろ?」
『ん、まぁ…ね』
だが、それでも何となく歯切れの悪い口調に、西原は首を傾げた。向かいに座っている祐斗も、何事なのかと一緒に首を傾げている。
「何だよ、どうした?」
『うーん…ちょっと、色々悩んじゃってさ。明日…その、誘ってくれたから…』
「迷惑だったか?」
『あ、全然!!違うよ…そうじゃなくてさ…イブでしょ?だから…何か、ね…』
返事を返し忘れていたわけでもなく、冬四郎、山上から何か言われていたわけでもなく、クリスマス・イブに誘われた事がむつの中ではネックとなっていたようだ。イブに誘う事に何の意味もないと思う人は、まず居ないだろう。それで悩ませたのかと思うと、西原は申し訳ないような気がしていた。
『…あのね、あの…明日…仕事の後でも良いなら…えっと、その…』
「少し呑みにでも行くか?」
『良いの?』
「次の日も仕事なら、あんまり遅くならないうちに家に送るよ。俺も明後日は仕事だしな」
『あ、うん…うんっ…』
むつの嬉しそうな声に、西原の表情は自然と緩んでいく。それを見ながら、祐斗はつまらなさそうに、豚モツをがしがしと噛んでいる。
「なら、何時頃に仕事が終るか分かったら早めに連絡くれな?迎えに行くからさ」
『ん、分かった…ありがと』
「うん。で、何でわざわざ電話なんだ?言いにくそうにしてるくせに」
『うっ…それは悪いなって思って、前日まで無視してたわけだし…それに、ちょっと声、聞きたいなって…』




