おてつだい
「で、まぁそんな大人な所でゆっくり過ごしたわけですよね?進展しなかったんですか?」
「…お前、何でそんなに気になるんだ?」
残り少なくなってきたビールをグラスにそそいで、祐斗は追加のビールを頼んだ。
「だって、むつさんに聞いても笑って流すか、恥ずかしがるだけなんすよ?何かあったんだ、って思うじゃないですか」
「進展なぁ…手繋いだくらいだぞ」
バスタオルを巻いていたとはいえど、一緒に風呂に入ったとは西原は言わなかった。それは、言っていい事ではない。
「えっ!?そんだけ!?まじでそんだけっすか?」
「それだけだよ…風呂出てから、陶芸体験の小屋に歩いて行くまでの間な」
「…まじか…むつさんがやけに隠すから、よっぽどの事あったのかと…だって、むつさん可愛くなりましたし」
「よっぽどって何だよ?それに、むつはそこそこ可愛いだろ?」
「そりゃあ…大人のデートスポットに行ったくらいだから、大人な事でもしたのかと…それと、可愛くなったっていうのは、何て言うんですかね。こう…前みたく、きりっとしてる時が少なくなってふわって?のほほんって?」
「祐斗君の話は分かりにくい」
そう言って西原は笑ったが、何となく分かる気がした。能力が使えなくなってからのむつは、無理して気丈に強がっているようだった。だが、最近はそれが少しずつ無くなってきているような気がする。




