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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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とあるひのこと

がさがさと周囲から音がしてくると、むつは音がした方に顔を向けた。銀色のように光る目が、いくつも並んでいて少し不気味な光景だった。


「…兄弟多いって大変よね。分かるわ」


むつが言うと、男はうんうんと頷いた。むつと男が話をしていると、がたがたっと音がして、小屋の立て付けの悪い戸が開いた。つい先程、4人が陶芸体験で世話になった2人が何事かと顔を出している。


「…あの、うちの両親です」


「えぇっ!?まじか…さっき陶芸体験でお世話になったんだよ。焼き上がるの楽しみなんだ」


「あ、そうだったんですか…こちらこそ、親子共々お世話になりまして。それに、昨日は仕事と言えどご迷惑おかけしました」


「母さん。この人たちが、ちびを助けてくれたよ。手当てしてやって、怪我してるんだって」


土を捏ねて器を作る時に、色々とアドバイスをしてくれた女性が、まぁと驚いたように駆け寄ってきて、男の手から子狸を抱き上げた。


「子沢山のかぁちゃんってわけか…そんな風に見えないよねぇ。若々しい、可愛らしい感じだし」


「だよね。ほんわかしてるし」


むつと菜々は女性に、抱き上げられた子狸の頭を交互に撫でた。轆轤を回す時に指導してくれた男性が、父親という事なのだろう。出てくると、むつたちにぺこぺこと頭を下げた。


「あなた方は妖が分かるんですか?」


「えぇ…少しだけ。でも、体験で教えて頂いてる時には全然分かりませんでした」


「そうでしたか…あの、もし宜しければお礼に…大した事は出来ませんし子供多く騒がしいかもしれませんが、うちで食事していってくださいませんか?」


思わぬ申し出に、むつは驚いた。そして、他の3人の顔を順々に見た。


「…まぁ少しならいいんじゃないか?京井さんに連絡入れといたら」


むつが化け狸の申し出を受けたいという顔をしていたからか、西原が言った。祐斗と菜々も、まんざらではない様子だった。


「じゃあ、お言葉に甘えて。少しだけ…お邪魔させて頂きます」


そう言うと、森の中に身を隠すようにしていた狸たちが、わらわらと出てきた。大小様々で、本当に子沢山な家族のようだった。

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