とあるひのこと
浴衣に着替えて、ゆっくり水を飲みながらむつは少しぐったりとしていた。酒粕の風呂に長く入っていたせいか、思った以上に身体が暖まり、のぼせたようだった。だが、それは西原も同じだった。むつが上がってから、しばらくするまでは出るに出れず、湯につかっていた。そのせいで、なかなか汗が引かない。西原は、はぁと溜め息を漏らした。
ぐったりとしていた2人だったが、時間になったのかテーブルに次々と料理が並べられると、だんだんと元気を取り戻していった。西原の言った通り、一口、二口くらいの料理が数多く並んでいる。ここ最近は食の細かったむつだったが、色々な物を少しずつ食べられるからか楽しげだった。
「やばいなぁ…酒粕ってすげぇ」
「うん、美味しい。お肉にも魚にも合う」
最後にむつは抹茶のアイスも食べて、満足そうな顔をしていた。むつの幸せそうな顔を見て、西原もつられたように笑みを浮かべて見守っていた。
「満足出来たか?」
「とっても」
「なら、そろそろ行くか。ゆっくり行けば、丁度いいくらいの時間にはなってるはずだからな」
「うん。あ、着替えなきゃ」
「こっち見るなよ?」
「見ないわよ‼ばかっ」
しゅっと西原が帯をほどくと、むつは慌てて顔を背けた。だが、何でこんな風に照れなきゃいけないのかとむつは少し疑問を感じていた。




