表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
639/1310

とあるひのこと

翌朝、寒さでか目を覚ましたむつは部屋を見渡した。うっすらと差し込む光はまだ暗い。だが、どこに何があるのかくらいは分かる。そっと上着を持つと、忍び足で部屋から出た。まだ誰も起きてはいないのか、1階も静まり返っていた。少し散歩をしようと、玄関に行くとすでに鍵は開いていたしサンダルも1つない。京井がまた散歩にでも出てるのだと思い、そろそろと戸を開けると外に出た。


ひんやりと冷たい空気で頬が痛いくらいではあるが、天気はよくなりそうだった。かこっかこっとサンダルを鳴らして、ゆっくりと歩いた。普段なら早く起きても、外に出ようという気分にはならない。やはり、いつもと違う雰囲気のせいなのか、部屋に居ては勿体無い気がしていた。


京井の気配を探るように、むつはひんやりと冷たい空気を大きく吸い込んだ。京井どころか、周りに人が居そうな気配がない。玄関は開けっぱなしで、濡らしたサンダルを外に干してるだけかもと思い、むつは庭に回ろうと振り向いて、びくっと肩をすくませた。


「…っと、悪い。前にも驚かせたな」


「うん…静かに寄ってくるの職業病?」


「このサンダルだからな、音がすると思ったんだけど。そうでもなかったな」


悪気のない冬四郎は、爽やかな笑みを浮かべていた。前に仕事を兼ねて京井の経営する別の旅館に行った時も、朝早くには冬四郎が居た。前は風呂場だったのを思い出し、むつは少し赤くなった。


「…で、何だ?寝れなかったのか?」


「目が覚めたの」


「西原君とのデートが楽しみで起きたってわけじゃないのか?」


からかうような冬四郎の言いように、むつは少し顔をしかめた。楽しみではないと言ったら嘘になるが、冬四郎からそんな風に言われるのは何だか嫌だった。


「楽しみじゃ、ないのか?」


「…そういうわけじゃないけど」


「どうした?」


「分かんない…」


「何が?」


ふぅと溜め息をつくと、むつはサンダルを鳴らして、離れの中に戻っていった。残された冬四郎は、むつの後ろ姿を見ていたが、ややあって追うように戻っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ